「不安で落ち着かない」状態はこのような疾患が考えられます

「不安で落ち着かない」のイメージ画像

不安とは何か危ないことが起きたときに体が自然に反応する仕組みです。
たとえば森で毒蛇を見かけたとき、心臓がドキドキしたり、汗が出たりするのは、「逃げるか、戦うか」を瞬時に判断するために体が準備を整えているからです。
この反応は人間が生き延びるために昔から備わっている大切な本能といえます。

ただしこの不安が強すぎたり、ずっと続いたりすると、日常生活や人間関係に支障をきたすようになります。
また不安が来るかもしれないというおそれまで重なって、心が追い詰められるようでしたら治療が必要です。

パニック症(パニック障害)

パニック症は突然激しい不安と身体症状が襲ってくるパニック発作を繰り返す病気です。
動悸、息苦しさ、めまい、発汗、手足のしびれといった身体症状に加え、「このまま死んでしまうのではないか」「気が狂ってしまうのではないか」という強烈な恐怖感が数分以内に頂点に達し、その後自然に治まります。
本人にとっては非常に苦しい体験ですが、発作そのものが命に関わることはありません。

一度発作を経験するとまた起きるのではないかという予期不安が生まれ、発作が起きたときに逃げられない・助けを求められないと感じる場所(電車、人混み、列、会議室など)を避けるようになります。
これを広場恐怖といい、「広い場所が怖い」という意味ではなく、「逃げられない状況が怖い」という不安です。次第に外出そのものが制限され、仕事や日常生活に大きな支障をきたすようになります。

動悸や息苦しさは心臓や甲状腺などの身体的な病気でも起こるため、まず内科的な検査で身体の異常がないことを確認することが大切です。
治療としては主にSSRI(抗うつ薬の一種)による薬物療法と、認知行動療法(CBT)という心理療法が、同等に有効な標準治療として推奨されています。
SSRIは効果が出るまで2週間〜数ヶ月かかることがあり、飲み始めに軽い胃の不快感が出ることもありますが、数日で治まるのが普通です。
また、症状が強い時期には即効性のある抗不安薬が補助的に使われることもありますが、依存のリスクがあるためあくまで短期的な使用にとどめることが重要です。

パニック症は適切な治療を続けることで、多くの方が症状をコントロールし、社会生活を取り戻せる病気です。
一人で抱え込まず、まずは医療機関に相談することが回復への第一歩です。

全般不安症

全般不安症は仕事・健康・家族・お金・将来など、日常生活のさまざまなことについて過剰な心配が半年以上にわたって続く病気です。
心配の対象は一つに絞られず、次々と別の不安に移っていくことも多いです。
身体症状としては、筋肉のこわばり・緊張性頭痛、慢性的な疲れやすさなどが見られます。
そして多くの場合、寝つきの悪さや眠りの浅さといった睡眠障害も認めます。

全般不安症は心配性な性格と混同されやすく、受診が遅れやすい病気ですが、適切な治療を続けることで多くの方が症状をコントロールでき、日常生活を取り戻せます。

強迫症(強迫性障害)

強迫症とは頭のなかに「鍵を閉め忘れたかも」「手が汚れているかも」「取り返しのつかないことをしてしまうかも」といった不安な考えが何度も繰り返し浮かんでくる病気です。
本人は「こんなこと考えても意味がない」「ばかばかしい」と十分にわかっています。
それでも考えが止められず、不安を和らげるために手を何度も洗ったり、鍵を何度も確認したりといった行動(強迫行為)をせずにはいられなくなります。
この「わかっているのに止められない」という葛藤そのものがこの病気のつらさです。

強迫症には、効果がしっかり確認された治療法が2つあります。
ひとつはセロトニンという脳内物質のバランスを整えるSSRIという抗うつ薬です。
飲み始めてすぐには効果を感じにくく、十分な効果が出るまで3か月程度かかることがありますが不安やこだわりを和らげます。
量はうつ病の治療よりもやや多めが必要な場合があります。

もうひとつは心理療法(曝露反応妨害法)です。
怖いと感じる状況にあえて少しずつ向き合い、強迫行為をしなくても不安が自然に落ち着いていくことを体験する練習です。
薬との組み合わせが最も効果的とされており、多くの方が症状の改善を実感しています。

治療は一朝一夕ではありませんが、適切なサポートを受ければ、日常生活を取り戻すことは十分に可能です。
放置すると症状が長引きやすいため、早めに受診することが回復への大切な一歩です。