「意欲が出ない」状態はこのような疾患が考えられます
意欲とは目標に向かって行動したいという心理的エネルギーです。
脳内のドーパミンという神経伝達物質が深く関わっているとされています。
気分や体調によって一時的に意欲が出ないことは誰にでもありますが、病的な意欲低下は単なる「やる気がない」とは異なり、自分では努力しても改善できない点が特徴です。
うつ病
脳のエネルギーが欠乏することにより、意欲が出なくなってしまう疾患です。
症状が進行すると、仕事や学業、家事などが困難となり、日常生活に大きな影響が出ます。
また元気な時には楽しめていたテレビや食事、趣味などにも興味がなくなってしまいます。
うつ病は生涯で10人に1人がうつ病になるとされており、決して珍しい病気ではありません。
慢性的に憂うつな気分が続き、思考がまとまらず堂々巡りになり、身の回りのことが手につかなくなります。
多くの場合は不眠を伴いますが、過眠となる方もいます。
この病気は、脳内神経伝達物質であるセロトニンやノルアドレナリン、ドーパミンなどのバランスが崩れることで起こるとされています。
言い換えますと、うつ病は個人の性格や能力とは関係がなく「誰にでも起こりうる病気」といえます。
下表のような症状がみられたときは当院にご相談ください。
主な症状
- 気分が沈んでいる
- 何をしても楽しくない
- 何事にも興味がわかない
- 食欲が落ちてきた
- よく眠れない
- 何かに追い詰められている気持ちになる
- 失敗したときに、自分を責めてしまう
- 自分には価値がないと感じる
- 思考力や決断力が落ちてきた
- 死にたくなることがある
など
うつ病の治療
休養、薬物療法、精神療法が治療の柱となります。
休養については仕事をしている方については必要に応じて休職診断書を発行いたします。
学生の方は環境調整や休学のための診断書を発行することもあります。
軽症の場合は働きながら治療することもありますが、現実には厳しいことも多いです。
経済的な不安を抱えている方も多いと思いますが、傷病手当や失業手当などの制度もありますので、担当職員が説明いたします。
薬物療法の中心となるのは抗うつ薬です。
通常は1週間~数週間で様々な症状が改善するのですが、その段階で服用を中止してはいけません。
再発を予防するため、回復してから数か月間は服用を続けることが重要です。
患者様によっては、抗不安薬や睡眠薬などを併用することもあります。
精神療法では心理的側面からアプローチし、うつ症状の改善を図ります。
限られた診察時間では難しいこともありますが、認知行動療法のエッセンスも取り入れています。
これは、物事の捉え方や問題となっている行動を見つめ直し、自分の陥りやすい思考や感情パターンに気づいて、心をうまくコントロールできるようにし、ストレスを軽減していく治療法です。
適応反応症(適応障害)
環境にうまく適応することができず、意欲が出ない状態が続くため、社会生活に支障をきたす疾患です。
不眠、食欲不振、全身倦怠感、頭痛、肩こり、腹痛、めまいなどの身体症状を伴うことも多いです。
適応反応症になるきっかけとして多いのは生活環境の変化であり、強いストレスのかかる出来事が生じてから1か月以内に発症することが多いです。
新しい場所に引っ越したとき、勤務先の部署がかわったとき、転職したとき、進学したときなどが原因としてよくみられます。
なお、適応反応症になったとしても、つらい症状が常に出現し続けるわけではありません。
仕事上の問題がストレスとなって適応反応症を発症している場合、勤務する日は憂うつで意欲が出なくても、休日には症状が少し楽になったり、趣味を楽しんだりすることができます。
治療に関してはまずは原因となっているストレスを軽くするため、環境調整を行うことになります。
仕事をしている方については必要に応じて休職診断書を発行いたします。
学生の方は環境調整や休学のための診断書を発行することもあります。
薬物療法は治療の主体ではありませんが、抗不安薬や抗うつ薬、睡眠薬などを用いることがあります。
精神療法としては、ストレスの原因に対する受け止め方のパターンにアプローチし、ストレスにうまく対処できるように極端となっている考え方を見直します。
双極症(躁うつ病)
双極症は気分が沈んで何事にもやる気が起こらなくなる「うつ症状」と、気分が高揚することに伴う「躁症状」の両方が繰り返される疾患です。
経過中の大部分がうつ症状のため、うつ病と間違われることがあり注意が必要です。
躁状態となると気分が高揚するだけでなく、イライラが強まってすぐに怒り出したり、考えが次々変わってまとまらなくなったり、予定を詰め込んだり、お金を使いすぎたりします。
振れ幅が大きいので、本人だけでなく周囲も振り回されて疲弊してしまいます。
治療としては気分安定薬を中心とした薬物療法がメインとなりますが、服用をやめてしまうと再発しやすいので注意が必要です。
表のような症状がある方は双極症の可能性があるので、まずは当院にご相談ください。
主な症状
躁状態の時期
- 通常よりもはるかに強い気分の高揚感
- 全身にエネルギーが満ち溢れているような気分
- 機嫌がよく、全く知らない他人に対しても話しかけてしまう
- 相手が寝ている時間(深夜や早朝など)でも平気で電話をかけてしまう
- 人の意見に耳を貸さず、自分中心の行動を続ける
- すぐに気が散って、集中できない
- 借金をしてまで物を買いあさってしまう
- 性的に無分別な行動をしてしまう
など
うつ状態の時期
- 気分が沈んでしまい、何もする気が起こらない
- 今まで好きだった趣味などにも興味が持てなくなった
- 食事が楽しくなく、体重が落ちてきた
- 夜は寝付けない、夜中に目が覚めてしまうこともある
- 過去のちょっとしたでき事にも悩んでしまい、忘れることができない
- 自分を責めることばかり考えている
- 自殺を考えてしまう
など
双極症の治療
双極症の治療は、薬物療法が基本となります。
具体的には、気分安定薬を処方します。
このお薬には、気分が大きく上下に乱れた状態を安定させる働きがあるので、躁状態の時期だけでなく、うつ状態の時期にも使用します。
患者様によっては、薬物療法に加えて、認知行動療法などの精神療法を取り入れることもあります。
これによって物事の捉え方や問題となっている行動を見つめ直し、自分の陥りやすい思考や感情パターンに気づいて、うまく心をコントロールできるようにし、ストレスを軽減していきます。
統合失調症
私たちの脳の働きは、脳に張り巡らされた神経のネットワークが司っています。
統合失調症は、この神経ネットワークの働きをうまくまとめることができなくなってしまう疾患です。
これに伴い、幻聴や被害妄想、興奮などの激しい症状がみられるようになります。
患者様によっては、意欲の低下、感情の起伏の喪失、ひきこもりなど、様々な精神症状が出現することもあります。
詳しい発症原因はわかっていませんが、遺伝的な要因に加え、ストレスなどが複雑に絡み合い、脳内の神経伝達物質のバランスが乱れることで引き起こされます。
主な症状
- 他人には聞こえない正体不明の声が自分の悪口を言う
- 誰かが自分の事を監視している
- 他人の発言やしぐさが自分に関係する特別な意味を持つようになった
- 自分の考えが筒抜けになって他人に伝わってしまう
- 自分の行動は誰かに操られているように感じる
- 頭が疲れてしまって何事にも興味が持てない
など
統合失調症の治療
統合失調症の治療は、薬物療法を基本としています。
薬物療法では抗精神病薬を使用し、幻聴や妄想などの症状の改善が期待できます。
また、者様の状態に応じて、睡眠薬・抗不安薬・気分安定薬などを併用する場合もあります。
薬物療法と並行して精神科リハビリテーションも行われます。リハビリテーションには病気に関する知識やストレスへの対処法を学ぶ「心理教育」、日常生活や人間関係をスムーズに進めるスキルを練習する「社会生活技能訓練」、記憶力・集中力・思考力などの認知機能の回復を目指す「認知機能リハビリテーション」などがあります。
認知症
認知症とは、それまで普通にできていた記憶や判断などの脳の働きが、少しずつ低下していく状態のことです。
加齢などに伴い、正常に働いていた脳が機能低下を起こし、記憶・思考・判断といった日常的な認知機能に支障が生じてきます。
症状が進むにつれて、買い物や料理、家族との会話といった日常生活がだんだんと難しくなることがあります。
次第に物事を記憶する能力や状況を判断する能力、自分がいる場所を認識する能力なども低下していきます。
さらに認知症が進行すると、外界への興味が薄れ、無気力な状態になる方も少なくありません。
実は、高齢者の約6人に1人が認知症を抱えているといわれています。
また年齢を重ねるほど発症しやすくなるため、決して珍しい病気ではなく、私たちの身近な問題です。
早期発見・早期対応によって、症状の進行を緩やかにしたり、その方の生活の質を保ったりすることも可能です。
下表のような症状が見られたときは、認知症の可能性がありますので、お早めに当院へご相談ください。
主な症状
- 何度も同じことを言ったり、聞いたりする
- 日時をよく間違えるようになった
- 財布やキャッシュカードなど、大切なものを頻繁に失くすようになった
- 大事なものを盗まれたと言って騒ぐことがある
- 金銭の管理ができなくなった
- 性格が変化して突然、怒り出したりするようになった
など
主なタイプ
認知症には様々な種類がありますが、とくによく知られているのが「アルツハイマー型認知症」です。
これは、アミロイドβなどが脳に蓄積することで神経細胞が壊れてしまい、脳の神経が機能異常を起こしてしまうタイプの認知症です。
神経細胞が死んでしまうことで、脳そのものも萎縮していき、脳の指令を受けている身体機能も徐々に失われていきます。
血管型認知症は梗塞や脳出血などにより、神経細胞への酸素・栄養供給が途絶えることで起こります。男性の有病率が女性の約2倍であることが特徴的で、小さな出血や梗塞を繰り返す中で気づかず進行するケースもあります。生活習慣の改善である程度予防が可能です。
レビー小体型認知症は、大脳皮質や脳幹に「レビー小体」という異常な細胞が生じ、脳神経細胞が破壊されます。パーキンソン症状(手足の震え・小刻み歩行)が先行することが多く、症状の日内変動や幻視が見られやすく、他の認知症より進行がやや速いとされています。
認知症の治療
認知症を完全に治す方法は確立されていませんが、ほかの病気と同じように、早期発見・早期治療が重要になります。
患者様によっては、お薬を使用することで病気の進行を遅らせることができます。
なお、意欲低下や抑うつ気分が見られる場合はうつ薬などを使用することもあります。
このほか、回想法や認知リハビリテーション、音楽療法、運動療法などが効果的な場合もあります。

