「集中できない」状態はこのような疾患が考えられます

「集中できない」のイメージ画像

集中できないという感覚は疲労やストレスによる一時的なものから、不安へのとらわれや発達特性に由来する慢性的なものまで、その背景は人によって異なります。
単なる怠けではなく、脳や心のサインであることも少なくありません。

ADHD(注意欠如・多動症)

ADHD(注意欠如・多動症)とは「集中しにくい」「じっとしていられない」「衝動的に動いてしまう」という特性を持つ神経発達症です。
これらの症状は子どものころから認めますが、子ども時代にADHDだった方の約70%は大人になっても何らかの症状や生活のしづらさを感じ続けています。

子どもの頃は「授業中に集中できない」という形で現れていた不注意が、大人になると仕事や日常生活に深く影響してきます。
たとえば、仕事の締め切りをたびたび守れない、書類の細かいミスが多い、大切な約束や支払いを忘れてしまうといったことです。

また、気が乗らない作業の先延ばし、財布・鍵・スマートフォンなどをしょっちゅうなくす、話を最後まで聞いていられないといったこともしばしば見られます。
一方で、自分の興味があることには驚くほど長時間集中できる「過集中」という状態になることもあります。
よく考えずに仕事を突然辞めてしまう、衝動的にお金を使いすぎる、会話の途中で口を挟んでしまう、といった衝動性が目立つ方もいます。

ADHDの治療には環境の整備、時間の使い方の工夫、心理的なサポート、そして薬物療法の四つの柱があります。
どれか一つで全てを解決しようとせず、自分に合った手段を組み合わせることが大切です。
ADHDを疑う症状で生活にお困りでしたら当院にご相談ください。

うつ病

脳のエネルギーが欠乏することにより、気分が沈んでしまう疾患です。
生涯で10人に1人がうつ病になるとされており、決して珍しい病気ではありません。
慢性的に憂うつな気分が続き、思考がまとまらず堂々巡りになり、身の回りのことが手につかなくなります。
多くの場合は不眠を伴いますが、過眠となる方もいます。
症状が進行すると、仕事や学業、家事などが困難となり、日常生活に大きな影響が出ます。

この病気は、脳内神経伝達物質であるセロトニンやノルアドレナリン、ドパミンなどのバランスが崩れることで起こるとされています。
言い換えますと、うつ病は個人の性格や能力とは関係がなく「誰にでも起こりうる病気」といえます。
下表のような症状がみられたときは、お早めに当院にご相談ください。

主な症状

  • 気分が沈んでいる
  • 何をしても楽しくない
  • 何事にも興味がわかない
  • 食欲が落ちてきた
  • よく眠れない
  • 何かに追い詰められている気持ちになる
  • 失敗したときに、自分を責めてしまう
  • 自分には価値がないと感じる
  • 思考力や決断力が落ちてきた
  • 死にたくなることがある

など

うつ病の治療

休養、薬物療法、精神療法が治療の柱となります。

休養については仕事をしている方については必要に応じて休職診断書を発行いたします。
学生の方は環境調整や休学のための診断書を発行することもあります。
軽症の場合は働きながら治療することもありますが、現実には厳しいことも多いです。
経済的な不安を抱えている方も多いと思いますが、傷病手当や失業手当などの制度もありますので、担当職員が説明いたします。

薬物療法の中心となるのは抗うつ薬です。
通常は1週間~数週間で様々な症状が改善するのですが、その段階で服用を中止してはいけません。
再発を予防するため、回復してから数か月間は服用を続けることが重要です。
患者様によっては、抗不安薬や睡眠薬などを併用することもあります。

精神療法では心理的側面からアプローチし、うつ症状の改善を図ります。
限られた診察時間では難しいこともありますが、認知行動療法のエッセンスも取り入れています。
これは、物事の捉え方や問題となっている行動を見つめ直し、自分の陥りやすい思考や感情パターンに気づいて、心をうまくコントロールできるようにし、ストレスを軽減していく治療法です。

全般不安症

全般不安症は仕事・健康・家族・お金・将来など、日常生活のさまざまなことについて過剰な心配が半年以上にわたって続く病気です。
心配の対象は一つに絞られず、次々と別の不安に移っていくことも多いです。
身体症状としては、筋肉のこわばり・緊張性頭痛、慢性的な疲れやすさなどが見られます。
そして多くの場合、寝つきの悪さや眠りの浅さといった睡眠障害も認めます。

全般不安症は心配性な性格と混同されやすく、受診が遅れやすい病気ですが、適切な治療を続けることで多くの方が症状をコントロールでき、日常生活を取り戻せます。

強迫症(強迫性障害)

強迫症とは頭のなかに「鍵を閉め忘れたかも」「手が汚れているかも」「取り返しのつかないことをしてしまうかも」といった不安な考えが何度も繰り返し浮かんでくる病気です。
本人は「こんなこと考えても意味がない」「ばかばかしい」と十分にわかっています。
それでも考えが止められず、不安を和らげるために手を何度も洗ったり、鍵を何度も確認したりといった行動(強迫行為)をせずにはいられなくなります。
この「わかっているのに止められない」という葛藤そのものがこの病気のつらさです。

強迫症には、効果がしっかり確認された治療法が2つあります。
ひとつはセロトニンという脳内物質のバランスを整えるSSRIという抗うつ薬です。
飲み始めてすぐには効果を感じにくく、十分な効果が出るまで3か月程度かかることがありますが不安やこだわりを和らげます。
量はうつ病の治療よりもやや多めが必要な場合があります。

もうひとつは心理療法(曝露反応妨害法)です。
怖いと感じる状況にあえて少しずつ向き合い、強迫行為をしなくても不安が自然に落ち着いていくことを体験する練習です。
薬との組み合わせが最も効果的とされており、多くの方が症状の改善を実感しています。

治療は一朝一夕ではありませんが、適切なサポートを受ければ、日常生活を取り戻すことは十分に可能です。
放置すると症状が長引きやすいため、早めに受診することが回復への大切な一歩です。