- 2026年7月12日
データから見る睡眠薬との正しい付き合い方

今回は成人の不眠症に対する各種睡眠薬の効果や安全性を比較した、国際的医学誌『The Lancet』掲載の包括的な研究(ネットワークメタアナリシス)をご紹介します。不眠症の診療では薬物療法が広く用いられています。本研究では多様な不眠症治療薬の急性期の効果や長期の有効性、副作用や治療継続性などを網羅的に検証しました。
まず、近年登場したオレキシン受容体拮抗薬(レンボレキサント等)は脳の覚醒システムを抑える新しい作用機序を持ちます。急性期(短期)において優れた睡眠改善効果を発揮するだけでなく、副作用による投与中止リスクが低く、長期使用においても有効性と安全性のバランスが保たれることが示されました。
非ベンゾジアゼピン系(Zドラッグ)に分類されるエスゾピクロンも急性期・長期の双方で高い有効性と良好な耐容性を示しました。一方で同じZドラッグであってもゾルピデムやゾピクロンなどは急性期の入眠効果は高いものの、めまいや転倒、記憶への影響といった副作用から途中で治療を中止する割合がやや高くなる傾向が見られました。
従来型のベンゾジアゼピン系睡眠薬(トリアゾラムなど)や一部の強力な鎮静薬は、即効性や急性期の改善効果には優れるものの、耐性(薬が効きにくくなること)や依存性、離脱症状のリスクがあり、長期管理には慎重な判断が必要です。
また、臨床でしばしば用いられるメラトニン受容体作動薬(ラメルテオン等)や鎮静性抗うつ薬(トラゾドン等)、抗ヒスタミン薬については一般的な不眠症に対する急性期・長期のデータが十分ではなく、効果が限定的である可能性が示唆されています。
不眠症の薬物療法では単に眠れるかどうかだけでなく、翌朝への持ち越し効果、転倒リスク、依存性、そして長期的に安全に続けられるかを見極めることが非常に重要です。当院では患者様一人ひとりの症状や生活スタイルに合わせて治療をご提案しています。睡眠のお悩みはお気軽にご相談ください。
https://www.thelancet.com/article/s0140-6736(22)00878-9/fulltext
