- 2026年10月15日
「高齢者のうつ病」の基礎知識

高齢者のうつ病は頻度が高く、生活の質を大きく左右する疾患です。疫学調査では、治療やケアを要する臨床的な抑うつ状態を含めると、地域在住高齢者の有病率は10%以上に達すると報告されています。
高齢期に初めて発症したタイプでは、健康問題や退職、経済的基盤や社会的役割の喪失、親しい人との死別といった喪失体験が大きく関与します。さらに近年の研究では、加齢に伴う微細な脳血管障害が背景となる「血管性うつ病」など、脳の器質的変化も発症に関わることが判明しています。
症状の面では、気分の落ち込みや興味・意欲の減退、不眠、食欲低下、希死念慮といった全年齢共通の症状に加え、高齢者特有のサインが目立ちます。具体的には、倦怠感や痛みなどの多彩な身体症状(不定愁訴)や過度な健康への心配(心気)や焦燥感が前面に出やすく、単なる老化現象と見過ごされがちです。
また、記憶力や判断力の低下を本人が自覚して不安を募らせることも多く、認知症の前駆症状との鑑別に難渋するケースも少なくありません。実際に老年期うつ病は将来的な認知症への移行リスクを高めるというエビデンスもあります。
治療は他の年齢層と同様に薬物療法と精神療法が主体となり、心理教育や環境調整も併せて行われます。比較的安全性の高い新規抗うつ薬が推奨されていますが、高齢者は肝・腎機能の低下や転倒などの副作用リスクが高いため、低用量から開始し、多剤併用を避けることが原則です。
さらにうつ病は再発率が高いため、軽快・回復した後も自己判断で中断せず、維持療法を継続することが再発予防の鍵となります。身近な方やご自身に気になる症状があれば、医療機関などに相談してみましょう。
うつ病については以下のページもご参照ください。
https://nemukoko.jp/feeling_depressed.html
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この記事の監修医師
・上飯田ねむの木こころクリニック
・院長 桑原 高史
・名古屋大学医学部 卒業
・精神科専門医・指導医
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